やっぱり音楽大学。埼玉県川越市にある東邦音楽大学は1965年設置の音楽学部のみの私立大学だ。
この大学、2015年から5年連続で赤字が続いているわけだが、特定資産等がまだそこそこあったため、持ちこたえてきた。しかし2019年度決算において特定資産954百万円から541百万円まで急落。一体何があったのか。
ずっと赤字だった同大学。それでも人件費をはじめとした各種経費を削ってなんとか赤字幅を抑制していた。しかし教育活動資金収支差額は前年度より77百万円悪化し▲276百万円に。その他活動による資金収支▲280百万円。たまらず特定資産を取り崩すことで、見かけ上の資金収支は一時的に改善した。
同大学の事業報告書には「固定資産取得計画を中止し、関連する第2号基本金を取り崩し、併せて、今後の施設設備拡充に備え新たな特定資産を計上した。」とあるが、実質的には特定資産の激減・現金微増という結果だけ残った形だ。
さて、このブログを見てくれている人ならわかると思うが、この大学も当然定員未充足大学だ。しかも学部定員充足率59%と、かなり気合の入った数値。全体の収容定員450名に対して、在学生数274名となっている。
収容定員を減らせばよいのだが、人件費は簡単には削れないので難しい問題だ。
「運用資産対教育活動資金収支差額比」という指標があるが、これは「教育活動資金収支(本業の収支)がマイナスの場合、それを何年賄える貯蓄があるか」というものだ。
同大学は2019年度決算において、▲276百万円もの教育活動資金収支赤字を出しているが、それを賄うための運用資金はおよそ7年分だけだ。一部不明な数値があるため推定値だが、良く見積もって、だ。
ちなみに、先般紹介したエリザベト音楽大学も同じく教育資金収支で赤字を出しているが、同比率で57年分用意している。しかもその貯蓄で運用し配当益を生み、良い流れを作っている。
ちなみに、先般紹介したエリザベト音楽大学も同じく教育資金収支で赤字を出しているが、同比率で57年分用意している。しかもその貯蓄で運用し配当益を生み、良い流れを作っている。
また、同指標の全国平均は50年程度だが、個人的にはこれを10年切るとヤバイと感じている。それは、人件費などの固定費をゆるやかに落としていく期間を考えると、10年ないと間に合わないからだ。定員は半分しか満たせていない(一番大きな収入源である学納金が半分しかはいっていない)一方、大きな支出を占める人件費は定員を充足している状態分かかるから、負のスパイラルに陥る。
同大学は、日本私立大学協会の出版誌「教育学術新聞」の企画「大学は往く 新しい学園増を求めて」にこう寄稿している。
「大学のこれから。「18歳人口の減少で、音楽大学はクラシックだけでいいのか、という声も出ています。リベラル・アーツなどを取り入れた音楽総合のような専攻の開設も考えています。東邦音楽短大には、ピアノやギターなどの楽器をやりたいと入ってくる社会人もいます。ジャズや伝統音楽などを取り込むことも視野に入れています」」
そんな悠長なこと言っとる場合か!君らんとこはまず定員充足して財務改善、そこから教育を語る資格が出てくる。