大して難しくありません

大学を結婚相手だと見立てましょう。結婚相手を探す場合、どこを見ますか。そう、年収でしょう。だけど、個人と違って組織がやっかいなのは、年によって年収が大幅に上下しちゃうことですよね。じゃあ、どこを見るか。そう、貯金額です。

この人(大学)、お金どのくらい貯め込んでるんだろう・・・。パートナー探しにおいて当然考えることですよね。
大学において貯金(運用資産)は「特定資産」「現預金」「有価証券」です。それらは、「貸借対照表」で確認できます。
ここで見ていく大学はモテモテの早稲田大学さん。引く手あまたです。
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特定資産というのは建物の更新や奨学金等、将来の各種支出に備えて積み立てておくものです。大抵、運用にまわして現預金ではなく債権等で運用しています。
ここで「あ、早稲田大学さんは540億円も将来に備えて積み立てているんだな、素敵」となるわけです。
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「有価証券」と「現預金」はどうか。ここで1,100億円近くあるので、それはもう相当なお金持ちだということがわかりますね。

いや、でもお金持ちに見せているだけで実は借金いっぱいあるのでは?!
ということで、貸借対照表における負債の部、下を見てみましょう。
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長期借入と短期借入は合計60億円程度。運用資産の額から考えれば、大したことないですよね。

では、貯金は潤沢でも「今」は稼げているのか。過去の財産を元手に無双しているだけで、今は全然じゃないの?
ということでその人の年収を見るために、「事業活動収支計算書」を見てみましょう。

事業活動収支計算書は教育活動収支(本業)、教育活動外収支(本業外投資活動等)、特別収支(建物売却等)の3つに分かれているので、まず本業でちゃんと稼げているか見ましょう。
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教育活動収支(本業)の下に収支差額が記載されているので、なるほど早稲田さんは30億円近く儲けているんだ!素敵!となるわけです。
ちなみに30億円という数字がピンと来ないかもしれませんが、それは全国平均と比べたり、私がいつも公開している「〇〇率」といった形で比率に変換して実態を把握するのも手ですね。

早稲田さんは本業のみならず、副業も熱心です。
教育活動外収支(本業外投資活動等)も見てみましょう。副業みたいなもんです。
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副業ではなんと60億円近くの黒字!中身を見ると、受取利息・配当益収入ですね。投資という副業で本業を上回る、まさに現代っぽい勝ち組さんですね。
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最終的な収支は下の方にある「基本金組入前当年度収支差額」を見ます。結果、早稲田さんは93億円もの黒字だったというわけですね。お金持ち!

このように相手の懐を探るように財務分析をやれば結構楽しいです。実際はもっと色々と見ることになりますが、これでザックリはわかるんじゃないでしょうか。

借金こさえないといけない業でも背負っているのか?

なんとなく各大学の財務諸表を見ていたら発見。聖マリアンナ医科大学。
1960年設立と後発の大学で、神奈川県に所在する私立医科大学だ。
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運用資産と借入金を眺めていたら、2019年度に大型の借り入れを行っている。
運用資産も大してないのに、よくこんな借入やるな・・・という感じだが。銀行からしたらいいお客なのだろう。収入は堅いし、公益性のある法人でもある。

どうやら創立50周年事業で2022年、24年、26年にそれぞれ新病棟等の新設計画があるそうだ。そりゃお金がかかる。



どでかい構想だ。こりゃ儲かっているところしか成しえないキャンパスですね。それでは収支を見てみよう。
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こちらは資金収支だ。毎年数十億程度の黒字が達成できており、上記設備投資を行った2019年のみ大きな資金収支赤字を出している。
同大学は赤字の要因について、事業報告書で下記のように記載している。

「(赤字の)要因としては、患者数減少や平均単価下落により医療収入が伸び悩む一方、リニューアル計画上の必要経費や直接材料費の増加のほかに、入試実態調査に係る第三者委員会関連経費、適時調査返還金、保有株式評価損の計上等の特殊要因が大きく影響しました。」

それ、あなたの感想ですよね?(AA略)
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上記のように医療収入は右肩上がりだ。原因としては1つ、校舎建て替えのための医療経費支出増加と施設設備支出の増加だ。
まあ、この大学のように稼ぐ力があれば、何年もかけて返せるのでしょうけど・・・。なんで医科大学って十分貯蓄しようという概念がないんですかね?積極投資は確かに評価されるべきですが、こと学校法人においては一概にそういえません。
医者のみなさん、こんなにポンポン病棟建てるのって絶対必要なのでしょうか(そりゃあるに越したことはないだろうけど)。




まあ日本医科大学なんて500億円も借入金あるから大丈夫か!
大いに借金して大いに設備投資して大いに稼ぐ、それが医科大学のやり方じゃい!

結局金に働いてもらうのが最強!



「本事業では、東京工業大学が附属高校跡地(JR田町駅前の約23,000平方メートル)を開発事業者に貸し付けたうえで、産学官連携拠点を含む官民複合施設として再開発し、開発事業者からの貸付料収入により財務基盤の強化を図るもの」
「75年間の定期借地権が設定され、再開発を主導する民間事業者が約25万平方メートルにもおよぶ官民複合施設を建設し、東京工業大学の教育研究施設や大規模な産学官連携のインキュベーション施設、最先端技術を活かした大学発ベンチャーなどのビジネス拠点となる計画」
「東京工業大学は借地期間中に開発事業者から貸付料を得るとともに、代物弁済によって財政負担なく大学施設を取得。これにより、東京工業大学は75年間にわたって年間45億円の貸付料収入を得る予定で、財務基盤の強化および産学官連携拠点形成への貢献が期待されます。」



よよよよ45億円~!!
しかも年間!ちなみに東京工業大学の授業料収益が約45億円なので、同額が毎年何もしなくても入ってくることになる。経常収益は466億円なので、約1割も利益が自動的に増加。
跡地の面積「約23,000平方メートル」は東京ドームの半分くらいの広さで、あの立地でそのような広大な土地を持っていること自体、ものすごい強みだ。

やはり土地ころがしは素晴らしい。リスクなんてないようなものだし、何より都内に持っていれば完全に勝ち組になれる。朝日新聞とかも、収益の主体は不動産事業ですしね。
日本の大学は長らく本業のみで収益を立ててきたが、やはり収益の分散化は必要だ。何か起こった時に別のどこかで補えるような財務体質にしておくのは、当然のことだ。




早慶だって資産運用を積極的に行っているし、それに追随しているところもある。
中小大学は規模拡大によって生き残りを図っている。

皆さんのお勤めのところはどうですか?
今この状態で、何もアクションを起こさず、SDやFDやら呑気なこと言っているようなら、本気で転職を考えるべきです。
これからは、というか今現在もですが、「富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」時代かと。この動きはいっそう強くなりそう。

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