2008年、福岡県みやま市瀬高町に1つの私立大学が誕生した。保健医療経営大学だ。保健医療経営学の学士が取れる日本唯一の大学という触れ込みであったが、開学以来定員を充足したことは一度もない。ちなみに初年度入学者数は27名であった。2013年に定員を150名から80名に変更、2015年には日本高等教育評価機構から「不適合」判定を受ける。
そして2019年5月、ついに2020年度より学生募集停止を発表。2023年に法人解散予定であることを発表した。
保健医療経営大学 学生募集停止のお知らせ
保健医療経営大学 学生募集停止のお知らせ
何がダメだったかというと定員を充足するほどの魅力がなかったのが問題だが、それに連動して財務もヤバイことになっていた。
2020年3月末時点での貸借対照表を見てみよう。
特定資産は当然0。現預金23百万円、有価証券なし。運用資産は23百万円の現預金のみだ。
2019年度は、全体の資金収支で▲221百万円もの赤字であった。これでは来年はやっていけないであろう。
※保健医療経営大学「情報公開」より
http://www.healthcare-m.ac.jp/university/finance/
ちなみに赤線が曲がっているように見えるが、線が曲がっているのではなく掲載されている計算書自体傾いているのだ。何を言っているか分からないかもしれないが、経営が危ない大学ほど、よくPDF写しを傾けて掲載するのだ。※保健医療経営大学「情報公開」より
http://www.healthcare-m.ac.jp/university/finance/
2016年からの経年で、教育活動資金収支と全体の資金収支を見ていく(カッコは全体の資金収支)。
2016年:+66百万円(+45百万円)→2億円寄付により黒字
2017年:+93百万円(+71百万円)→2億円寄付により黒字
2018年:+112百万円(+91百万円)→3億円寄付により黒字
以上のように、寄付によりなんとか経営を維持していた。同大学の大元は、「社会医療法人雪の聖母会」というところであり、おそらく寄付のほとんどがこの医療法人から受け取っていたものであると推察できる。
ちなみに2018年度の教育活動資金収入における寄付の割合は65%という異常事態。
寄付金収入も「教育活動資金収入」に計上されるため、同大学は教育活動資金収支差額も黒字だったのだ。
ちなみに2018年度の教育活動資金収入における寄付の割合は65%という異常事態。
寄付金収入も「教育活動資金収入」に計上されるため、同大学は教育活動資金収支差額も黒字だったのだ。
しかも、2018年度末まで1350百万円もの借入を行っていたが、返済能力もないということで翌年度に債務免除。
医療法人からしたら、とんでもない赤字を垂れ流し続けた大学だった。
学校閉学まで残り2年ほど。医療法人からしたら、頼むからあと2年赤字幅を縮小してくれというのが本音だろう。なぜなら、赤字分補てんしなければならないのだから。
まとめ
- ずっと収容定員未充足で、医療法人からの寄付でなんとかやっていけていた
- その後も赤字続きでついに寄付打ち切り、債務残高も1350百万円あったが、返済能力がないということで債務免除