平成音楽大学は熊本県所在の、音楽単科大学。九州で唯一の「音楽単科大学」と称し、音楽学部のみで奮闘。しかし、収容定員充足率は51.3%と危機的な状況。それに伴い、財務も悪化。教育活動収支差額(本業での収支)は平成22年以来、ずっと赤字というミラクルを達成。

その大学が、ついにレッドゾーンに突入している。主に2019年度決算から、財務を紐解いていきたい。


充足率5割で財務状況は大丈夫なのか

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平成音楽大学HP「事業実績・財務データ」より https://www.heisei-music.ac.jp/information-disclosure.html 

明浄学院の場合もそうであったが、危機的な状態であっても平気で経年で分かりやすく財務状態を晒す。いったいどういう意図なのだろうか。
まず、流動資産を見ていくと、2015年の587百万円から2019年には169百万円に激減。2018年に1417百万円となっているが、これは熊本地震による罹災に対する一時的な収入なので、後述する。

流動資産の多くは現預金だと思われるが、そのほかに手元資金はあるのかを貸借対照表で見ていく。
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運用資金は特定資産168百万円と流動資産169百万円。おおよそ300百万円が運用資金となる。資金収支上、2019年度は45百万円のキャッシュ減(赤字)だ。単純に、この赤字が6年続けば資金がショートしてしまう。猶予期間は10年とない状態だ。


赤字でも校舎改築!起死回生の設備投資

このような学生も集められない財務が危機的な状態にある大学が、2017年から大型の建物の建て替えを行なっている。 同大学は2016年の熊本地震により被災。学舎がほとんど使えなくなるなど、甚大な被害を受けた。2017年〜2019年にかけて校舎等を新築。原資は熊本県からの「災害復旧費補助金」の1347百万円借入金」。平成30年決算でこの補助金と借入金200百万円に対し、1747百万円の施設関係支出を計上。

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どうせ学生が入らないのだから、最小限の施設で良いかと思うのだが、そこは平成22年からずっと赤字を出してきた大学だけあって、発想が違う。


では、これらの校舎に対する設備投資で入学者数は増えたのか。平成30年度入学者は定員100名に対し入学者47名。令和元年度は55名。令和2年度は46名と相変わらず低調。 97BD4A51-37A3-4C58-B93D-8F5345F085EF
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全く投資に見合った学生数増加は達成できていない。新入生は、豪奢な建物で本来の2分の1の人数で使えるのだからある意味お得であるが・・・。 豪華な設備は維持費もかかるので、将来的にこれが足を引っ張るのは目に見えている。

また、この大学はご丁寧にも各種財務指標の経年も掲載している。特に着目したいのは「運用資産余裕比率」だ。これは、運用資産から外部負債(借入金等)を差し引いた金額を、事業活動収支の経常支出で割った数値である。つまり、学校法人の一年間の経常的な支出に対してどの程度の運用資産が蓄積されているかを表す指標である。
平成27年度の184%から、令和元年度には▲27%までに減少。つまり、1年間の経常的な支出を賄えるほどの運用資産が無いことを示しており、非常に危険な状態だ。

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まとめ

  • 大学は平成22年以来ずっと教育活動収支差額(本業)で赤字を出し続けている
  • 熊本地震で被災。学舎がほぼ使えなくなるが、熊本県の補助金により校舎を一新
  • 校舎一新により起死回生を図るが、相変わらず収容定員充足率が5割程度
  • 毎年数千万円の赤字に対し、直近の手元資金は300百万円ほど。また、校舎建て替えに伴う大幅借入れにより財務はさらに悪化することが予想される。