エリザベト音楽大学をエリザベス音楽大学だと勘違いし、エリザベド音楽大学なんだと思ったらエリザベト音楽大学だったくらい、音楽には疎い。
そんな自分でも、聞いたことがある音楽大学がある。上野学園大学だ。
盲目のピアニスト・辻井伸行氏を輩出した、あの大学だ。

そんな大学が2020年7月に突然、大学部門の学生募集停止を発表した。都内という恵まれた立地にありながら、1958年から続いた歴史は突然の終わりを告げた。



ちなみに短期大学と中学高等学校の募集は引き続きするそうだ。それにしても突然の募集停止、いったい何があったのか。
ホームページには

「少子化や社会情勢の大きな変化の中、様々な改善策を試みましたが、
大学部門の厳しい状況に変わりなく、募集停止に踏み切らざるを得なくなりました。」

とあるが、本当にそうなのか。財務からその内情をみていきたい。

先ず押さえておきたいが、上野学園大学はご多分に漏れず定員未充足大学だ。2020年度における学部収容定員充足率は50%と、ここ数年50%台で推移している。
2020年3月末の貸借対照表において、特定資産は122百万円、現預金221百万円と、事業規模に対して極端に少ない状態。その他有価証券を持っているかは不明。

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※上野学園大学「事業報告書・財務諸表」より
 https://www.uenogakuen.ac.jp/university/about/disclosure/report.html



2019年度決算において教育資金収支差額で▲184百万円も赤字を出しているので、現状の運用資金では借入や資産売却をしない限り、2年ともたないことになる。後述するが、同大学は過去4年でめちゃくちゃ大切な資産を売却しまくっている。
ちなみに全体の資金収支は48百万円の黒字となっているが、これは借入金収入430百万円があったからだ。

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2016年からの教育活動収支をみてみよう(カッコは全体の収支[基本金組入前当年度収支差額])。
いつもは「資金収支」を見ているのだが、活動区分ごとの資金収支が公表されていないため、事業活動収支で見る。事業活動収支は、減価償却など非資金性のものも含む収支だ。
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以上のように、教育活動収支は4年連続赤字で、絶望的な状態だ。ちなみに2016年に全体の収支が黒字なのは、バッハの自筆楽譜を売却した収入があったからだ。
また、特定資産と現預金も合わせて350百万円ほどしかないため、これからも同水準の赤字が続けば、資金が尽きてしまう。

さらにこの4年で、資産売却も積極的に進めている。過去4年の資産売却収入をみていこう。

2016年:407百万円→草加土地やバッハ自筆楽譜売却等の資産売却
2017年: 43百万円→草加校地で保留していた資料の売却
2018年:112百万円→草加市に郊外型学園として使用していた校地・校舎を売却
2019年:0.25百万円→ピアノの売却

僕は音楽に詳しくないのだが、バッハ自筆楽譜って売却していいのだろうか。しかも草加校地の資料も売却してるし、何か大切なものを大きく失っている気がする。
ていうか、2019年のピアノ売却0.25百万円て。

こういった音楽大学にとって大切な資源を売却する局面である財務状況だから、大学部門は閉じざるを得なかったのだろうが、それにしてもあまりにもひどすぎる財務状況だ。まず、収容定員を充足する手立てははなかったのか。色々と疑問が残る大学部門の募集停止だ。
大学にある資産、とりわけ教育学術的な無形資産の継承は、こういった芸術界隈においても非常に慎重に行うべきである。この大学が開学以来培ってきた技術・人財といったものは、このずさんな経営で立ち消えることとなった。

ちなみに同大学は2016年に文科省に第三者委員会の設置を要請されていた。
その後設置された委員会によると、理事長ら石橋家への過剰報酬、身内で固めた株式会社への不透明な業務委託による利益相反等を報告している。
また、残業代未払いによる教職員組合との裁判があったり、法人に反旗を翻した教員を解雇したりと、色々と問題を起こしていた。





エリザベト音楽大学のように、きちんと貯金をして堅実経営をしていれば、こんなことにはならなかったのだが・・・。



まとめ

  • 上野学園はここ数年ずっと定員未充足で、2020年度学部充足率は50%
  • 赤字続きで、バッハの楽譜や校地校舎を売却するなど、苦しいお財布事情
  • おまけに運用資金は350百万円ほどしかなく、教育活動資金収支差額▲184百万円に対し、2年ともたないような運用資金状況
  • 2019年にピアノ売却して0.25百万円ゲット