一時期、いや今もだが、まとめサイトというのが流行った。2ちゃんねるやネットニュースをまとめ上げ、記事としてアップする。刺激的なタイトルやオカルト的なネタが好評で、今もなお多くのまとめサイトが存在する。しかしその一方で、恣意的な編集や拝金主義的で膨大な広告が多くの批判を呼んだ。
それと全く同じことをしている媒体がある。そう、新聞だ。
12月18日、朝日新聞にこのような記事が掲載された。
「コロナ禍で休退学5千人超 大学生・院生、文科省が調査」
この記事のタイトルを見た受け手は、どう思うだろうか。
「やっぱりコロナで全国の大学生は大変な状況で、経済的な困窮状態にあるのだな。退学者がこれ以上増えると大変だ」と感じるだろう。
しかしこの記事の情報元である文科省の資料を読むと、全くのデタラメであることがわかる。
https://www.mext.go.jp/content/20201218-mxt_kouhou01-000004520_01.pdf
この資料では、こう結論付けている。
・学生数に占める4月~10月の中退者数の割合は、令和元年度に比べて令和2年度の方がやや少ない。
・令和2年度について、中退の最も中心的な理由は、経済的困窮(18.0%)、学生生活不適応・修学意欲低下(17.3%)など。令和元年度と比べ概ね同様の傾向である。
・学生数に占める4月~10月の休学者数の割合は、令和2年度と令和元年度で、海外留学を除いた場合、大きな変化は無い。
・令和2年度について、休学の最も中心的な理由は、経済的困窮(14.6%)、心身耗弱・疾患(9.4%)など。令和元年度と比べ、経済的困窮の割合はやや増加の傾向であるが、心身耗弱・疾患の割合は概ね同様の傾向である。
要するに、割合は少し減ったけど理由とかはあんま変わらんよ、ということ。文科省の資料で伝えているのは「退学者・休学者の数も割合も減っているよ」ということ。休学者の経済的困窮の割合が増えたのは、海外留学の割合が減ったのでその分他の割合が相対的に増えたのだと予想される。
文科省の休学・退学者推移をグラフに示すとこうである。
このコロナ禍で数も割合も減ってるやん!
2年分しかないからなんか変な線グラフになっちゃった。
上記グラフのうち、コロナ感染症によるものだと判明している割合が退学0.03%、休学0.14%だということ。
皆さんこれをどう思うだろうか。確かに大学生である時期にコロナという困難な局面は可哀想であるが、それをサポートする大学側もあらゆる方策で努力している。意外と少なく抑え込めているな、と思うだろう。
この努力と大学生の根気の結果、全体の中退・休学割合は減っているのだ(休学者が減ったのは海外留学できなくなったのが大きいと考えられる)。
コロナ禍で大学生が大変という事実は変わらない。だがそれと、いやそれ以上に大学や国は支援を惜しまず行っている。
コロナ禍で大学生が大変という事実は変わらない。だがそれと、いやそれ以上に大学や国は支援を惜しまず行っている。
国が行う就学支援の他、大学独自で行う給付金や個々のメンタルケア等、大学がおこなっている救済手段は枚挙にいとまがない。
学費に関しては資料にある通り、「10月末時点で、全体の98.3%の大学等において、後期分の授業料の納付猶予を実施」「高等教育の修学支援新制度に加え、全体の71.8%の大学等において、経済的に困難な学生を対象とした各大学等による授業料等減免を実施。」とある。学費は大学の生命線だ。
学費に関しては資料にある通り、「10月末時点で、全体の98.3%の大学等において、後期分の授業料の納付猶予を実施」「高等教育の修学支援新制度に加え、全体の71.8%の大学等において、経済的に困難な学生を対象とした各大学等による授業料等減免を実施。」とある。学費は大学の生命線だ。
適当に他人の資料改ざんしてパソコンで打ち込んで批判することしかできない新聞屋は想像できないだろうが、現場はめちゃくちゃ頑張っているのだ。
ここからさらに感情論になるが、現場の教職員はこのような状態でも学ぶ機会を確保するため、大学で修学する意味や喜びを必死に学生に伝えている。
ここからさらに感情論になるが、現場の教職員はこのような状態でも学ぶ機会を確保するため、大学で修学する意味や喜びを必死に学生に伝えている。
新聞社はオワコンなので自ら記事を創造できないのは仕方ないにしても、他人の資料を都合よく改ざんして現場を混乱させるのだけはやめてほしい。
暗い記事ばかりだと気分が落ち込む。批判ばかりではなく、たまには大学が行うサポートについて、積極的に取り上げてはどうだろうか。