2012年11月、大学業界に激震が走った。日本学術会議の人選問題よりも、もっと根本的な問題だ。
秋田公立美術大学、札幌保健医療大学、岡崎女子大学の3つの大学新設について、大学設置・学校法人審議会の認可を覆すことを田中氏(当時文科大臣)が示唆し大騒ぎになった。




3大学でも大きいが、そのほかに同時期に既設大学の16学部、13の大学院を認可していたので、こりゃヤバイことになるぞと騒然となった。
大学を設置する際、よほど事務が無能でなければ、潤沢な資金と計画でヘマしない限り認可される。もちろん学生確保の見通しや書類上の高度なハードル、教員確保やキャンパス確保は大変なものだが、金にモノ言わせて紀伊国屋やら業者に委託すりゃある程度形になるのだ(担当者は大変な目にあうが)。
それなりの準備をし、あとは審査がザルの学校法人審議会の了承をもらえれば認可、あとは文科大臣の認可ももらって学生募集スタート!となる。
ザルの審議会といったが、これは審議会の構成員個人に対する批判ではなくその組織そのものだ(その一個人・担当者が不可をしたくとも、前例の基準を踏襲しないといけないのだ)。

田中氏は不認可の理由として「大学が多すぎ、質が低下している」と話したが、これは全国民がなんとなく感じていることだろう。なぜ少子化なのに、大学が増えるのだろうか。

不認可になりかけた上記3大学、その後どうなったかを財務面等で追ってみた。
秋田公立美術大学は公立で会計基準も違い、最終的には県が助けてくれるため財務面はカット。

それではまず、札幌保健医療大学からだ。
7つの専門学校と3つの福祉会をもつ、吉田学園が母体だ。よって、財務書類も学園全体の者となってしまうため純粋な大学の財務は見られないがそこは仕方ない。
まず、当然のように定員未充足だ。学部収容定員充足率は78.8%。偏差値はBF~40。入試倍率は1.5倍だ。
教育活動収支(本業の収支)と経常収支(教育外も含めたもの)の経年変化は下記のとおり。
okazaki1
2017年に赤字転落したが、その後は持ち直している。大学の学納金はそれほど増えていないため、これはおそらくその他専門学校での収支改善があったと予想。まあ、全体としてそれほど悪くない。
では特定資産(貯蓄)や借入金等はどうか。
okazaki2
事業規模にしてはそこそこの貯蓄、といったところか。それほど多くもないという感じ。
大学はずっと未充足なので、他の設置校の収支で助けられていると予想。2015年はデータがなかったので不明。


次に岡崎女子大学。愛知県岡崎市に本部を置く、短期大学も持つ学校法人だ。「短期大学のノウハウもあるなら4年制も大丈夫だ!」と思ったがそこは違った。
充足率は当然のごとく未充足で89.5%。偏差値はBFで入試倍率は1.2倍。
教育活動収支(本業の収支)と経常収支(教育外も含めたもの)の経年変化は下記のとおり。
sapporo1
はい捕まえたあああああああああ!

いや、収支は改善してますよ?でもこれ、あまりにも赤字続き過ぎて・・・。中身を見ると学納金の額が増えているので、充足率を改善してきたのであろう。
これだけ赤字を出して特定資産(貯蓄)や借入金は大丈夫なのか、見ていく。
sapporo2
借入金は一貫して0.特定資産も微減といったところだろうか。赤字続きの割には貯蓄の取り崩しもなく、それほど悪くはない。

この2校ともいえることは、財務はそれほどひっ迫しておらず悪い状態ではないことだ。だが偏差値や充足率を見る限り、この先はかなりの困難が予想される。

ちなみに秋田公立美術大学は充足率102.1%、偏差値52、入試倍率も2.1倍と良好な状態だ。さすが公立大、強いな。

恐ろしいことに、大学は今現在もドンドン誕生している。
2020年には湘南鎌倉医療大学、名古屋柳城女子大学、高知学園大学、静岡県立農林環境専門職大学、東京国際工科専門職大学、びわこリハビリテーション専門職大学、東京保健医療専門職大学、情報経営イノベーション専門職大学、開志専門職大学、岡山医療専門職大学、静岡県立農林環境専門職大学短期大学部が新設された。ウソみたいな話だが本当なのだ。 
2021年も多くの新設大学が誕生する。そう、少子化なのに、だ。

皆さんはこれをみて、改めて大学不認可問題についてどう思いますか?
コメントでご意見いただければ、と思います。