約1,000万円

仮に大手大学である帝京大学が、認証評価機関(日本高等教育評価機構)で受審しようと思った場合、かかる経費だ。
「教育の質の保証」を求めるのに、1000万円、安いかな?


210222-1

まず、認証評価制度というのは何かというと「教育の質」を大学設置認可後にも保証するための、事後チェックする制度のようなものだ。きちんと大学設置基準を順守しているか、授業運営は適切か、財務は大丈夫か等を項目ごとにみられる。
かくいう私も認証評価を受けるにあたっての主担当となったことがあるが、正直・・・


バッカじゃねええええええええええのおおおおおおお

という内容だった。
こんな金かけて大げさにやる必要なんてありますか。

認証評価は大まかに書面調査と実地調査がある。書面調査は事前に提出した各項目の自己点検評価書(これが膨大)に対して、認証評価機関から質問等のやりとりを行う。膨大な量の紙での提出を求める等、どうにかできないかと思う場面はあるが、これはまあ必要なのはわかる(総合大学の場合、とてつもない量の紙をダンボールで送るハメになる)。

問題は実地調査だ。はっきり言ってこんなもの、必要な大学以外やる意味はない。
210223-1
※日本高等教育評価機構
210223-2
※大学基準協会


参考までに、認証評価機関である日本高等教育評価機構と大学基準協会の実地調査のスケジュールを掲載した。評価機構はご丁寧に前泊まで載せている。
この2日間のスケジュールで、大学全体がバタバタとしてアレコレ走り回りながら、準備し、対応し、振り回される。日本高等教育評価機構など、ホテルや昼食、会場等も大学側が用意することになっている。
場合によっては直接大学に出向いて教育環境視察や面談をする必要があるでしょう。でも、一律にそれを課す理由などない。7年に一度受審することは法的根拠があるが、自己点検・認証評価のやり方なんて法的根拠がない、自由でしょう。


第一、例えば早稲田大学が認証評価を受けて不適合となって、何か影響あると思いますか(補助金が減額になるくらいか)。そりゃ教員数とかケチって最低基準下回ってたら問題になるでしょうが、それ以外なんて大学の好き勝手にやれば良い。現に、医科大学が例の不正入試問題で次々と不適合になりましたが、補助金減額になるだけで、世間の人は不適合に関してなんとも思っていない。
そして何より、認証評価機関の適合・不適合なんていちいち大きなニュースにならない。たまに、ヤバイ大学が不適合になったときにニュースになるくらいだろうか、世の中の人はそんなことに関心を持つほど暇ではないのだ。
「認証評価機関が不適合を出したから大学が廃止になった!」と騒ぐ人がいるが、そうではなく、もともと廃学寸前の大学に認証評価機関がトドメを刺しているだけだ。

2018年度に上野学園大学が不適合になり、その後大学部門を閉じた。でも、この大学なんてもともとヤバかっただけで、認証評価で不適合になったなんか誰もしらない。



また、このブログでも紹介した愛国学園大学は一度保留になった後に適合になっていますが、果たして本当にこういう大学に適合を出して良いと思えますか?




もっとタチが悪いのは、不適合になったのにものうのうと大学運営を続けているところだ。
神奈川にある松蔭大学は、2018年に内部ガバナンスに関する法的指摘を受けて不適合となったが、そもそもそんなことはニュースにすらならならず誰も知らないので、普通に学生募集をして今も授業を行っている。

というわけで、認証評価なんて世間の人は誰も関心がないし、その機能性については従来から指摘があった。
教育の質を調べるために書面上でやり取りするのはまだ良いが、今のように大規模に実地調査等をする必要なんてなく、適切な規模に縮小すべきなのです。

そもそも論ですが、各省庁が「〇〇機構」「〇〇協会」等作り始めたら、まず利権だな、と疑うべきです(悪意持ってそういう利権団体を作ることはしなくとも)。今の大学認証評価機関は日本私立大学連盟・協会の関連団体みたいなものですが、結局の大元は文科省。手垢がたっぷりついているでしょう。
日々のニュースの「〇〇が会食いった!」「汚職だ!」とか見えやすい細かいお金より、こういう見えづらい錬金術の方がよほど悪質ですよ。