カテゴリ: 大学の財務

毎年100億円

川崎医科大学を運営する川崎学園が毎年受け取る受取利息・配当益収入だ。
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※2016年・2017年の運用資産は推定値

驚くべきこの大学。3,000億円もの運用資産を持つ、最強の大学だ。早稲田大学は1,200億円ほどなので、その力が十分わかる。
学納金124億円、医療収入437億円だから、配当益100億円というのは収益の大きな柱だ。
余談だが同学園が所在する倉敷市の一般会計の予算はおよそ1900億円、税収が700億円ほどだ。もう倉敷を超えたといっても過言ではない。

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2019年度は、副業の儲けが本業の3倍近くになっている。
ただでさえ儲かっているのにも関わらず、副業も絶好調な様子。副業というのはもちろん受取利息・配当益収入のことだ。




なんなんだこの大学・・・と思っていろいろ調べてみると、このような記事が。
「…また20年現在、「最も高い医大」は川崎医科大学であり、学費は約4737万円で、偏差値的には医大ランキングの最下位に近い。」


付属高校を含めたトータル学費は、6,500万円かかるという。

やっぱり世の中金や!


倉敷にそんな金持ちがいるのか?いや、金持ちが倉敷に集まるのだろうか。
しかし、これだけの収益と貯蓄があれば、学費値下げしたって全然余裕なのに、やはりそこは医学部単科大学だからか。偏差値最下位に近いレベルでも、現状維持でOKということか。帝京は総合大学なので、その辺は複合的な要素で学費値下げできたのでしょうね。

いや~しかし、世の中には知らない所でガッポリ儲けている大学がまだまだあるのですね・・・。

大して難しくありません

大学を結婚相手だと見立てましょう。結婚相手を探す場合、どこを見ますか。そう、年収でしょう。だけど、個人と違って組織がやっかいなのは、年によって年収が大幅に上下しちゃうことですよね。じゃあ、どこを見るか。そう、貯金額です。

この人(大学)、お金どのくらい貯め込んでるんだろう・・・。パートナー探しにおいて当然考えることですよね。
大学において貯金(運用資産)は「特定資産」「現預金」「有価証券」です。それらは、「貸借対照表」で確認できます。
ここで見ていく大学はモテモテの早稲田大学さん。引く手あまたです。
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特定資産というのは建物の更新や奨学金等、将来の各種支出に備えて積み立てておくものです。大抵、運用にまわして現預金ではなく債権等で運用しています。
ここで「あ、早稲田大学さんは540億円も将来に備えて積み立てているんだな、素敵」となるわけです。
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「有価証券」と「現預金」はどうか。ここで1,100億円近くあるので、それはもう相当なお金持ちだということがわかりますね。

いや、でもお金持ちに見せているだけで実は借金いっぱいあるのでは?!
ということで、貸借対照表における負債の部、下を見てみましょう。
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長期借入と短期借入は合計60億円程度。運用資産の額から考えれば、大したことないですよね。

では、貯金は潤沢でも「今」は稼げているのか。過去の財産を元手に無双しているだけで、今は全然じゃないの?
ということでその人の年収を見るために、「事業活動収支計算書」を見てみましょう。

事業活動収支計算書は教育活動収支(本業)、教育活動外収支(本業外投資活動等)、特別収支(建物売却等)の3つに分かれているので、まず本業でちゃんと稼げているか見ましょう。
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教育活動収支(本業)の下に収支差額が記載されているので、なるほど早稲田さんは30億円近く儲けているんだ!素敵!となるわけです。
ちなみに30億円という数字がピンと来ないかもしれませんが、それは全国平均と比べたり、私がいつも公開している「〇〇率」といった形で比率に変換して実態を把握するのも手ですね。

早稲田さんは本業のみならず、副業も熱心です。
教育活動外収支(本業外投資活動等)も見てみましょう。副業みたいなもんです。
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副業ではなんと60億円近くの黒字!中身を見ると、受取利息・配当益収入ですね。投資という副業で本業を上回る、まさに現代っぽい勝ち組さんですね。
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最終的な収支は下の方にある「基本金組入前当年度収支差額」を見ます。結果、早稲田さんは93億円もの黒字だったというわけですね。お金持ち!

このように相手の懐を探るように財務分析をやれば結構楽しいです。実際はもっと色々と見ることになりますが、これでザックリはわかるんじゃないでしょうか。

借金こさえないといけない業でも背負っているのか?

なんとなく各大学の財務諸表を見ていたら発見。聖マリアンナ医科大学。
1960年設立と後発の大学で、神奈川県に所在する私立医科大学だ。
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運用資産と借入金を眺めていたら、2019年度に大型の借り入れを行っている。
運用資産も大してないのに、よくこんな借入やるな・・・という感じだが。銀行からしたらいいお客なのだろう。収入は堅いし、公益性のある法人でもある。

どうやら創立50周年事業で2022年、24年、26年にそれぞれ新病棟等の新設計画があるそうだ。そりゃお金がかかる。



どでかい構想だ。こりゃ儲かっているところしか成しえないキャンパスですね。それでは収支を見てみよう。
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こちらは資金収支だ。毎年数十億程度の黒字が達成できており、上記設備投資を行った2019年のみ大きな資金収支赤字を出している。
同大学は赤字の要因について、事業報告書で下記のように記載している。

「(赤字の)要因としては、患者数減少や平均単価下落により医療収入が伸び悩む一方、リニューアル計画上の必要経費や直接材料費の増加のほかに、入試実態調査に係る第三者委員会関連経費、適時調査返還金、保有株式評価損の計上等の特殊要因が大きく影響しました。」

それ、あなたの感想ですよね?(AA略)
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上記のように医療収入は右肩上がりだ。原因としては1つ、校舎建て替えのための医療経費支出増加と施設設備支出の増加だ。
まあ、この大学のように稼ぐ力があれば、何年もかけて返せるのでしょうけど・・・。なんで医科大学って十分貯蓄しようという概念がないんですかね?積極投資は確かに評価されるべきですが、こと学校法人においては一概にそういえません。
医者のみなさん、こんなにポンポン病棟建てるのって絶対必要なのでしょうか(そりゃあるに越したことはないだろうけど)。




まあ日本医科大学なんて500億円も借入金あるから大丈夫か!
大いに借金して大いに設備投資して大いに稼ぐ、それが医科大学のやり方じゃい!

69.3%

この数字は、京都精華大学の学部収容定員充足率の3か年平均だ。こんな充足率の大学、絶対ヤバイですやんというのがこのブログ読んでる人の総意だが、ここは少し違う。
運用資産余裕比率は1.8年分と、まあ全国平均並み。過度な借入もない。驚くべきは、この充足率で経常収支差額比率が3か年平均で辛うじて黒字なところだ。一番大きな収入である学納金が欠損しているであろうこの大学、なぜ黒字にできるのか、追っていきたい。

1968年に開設された同大学。場所は京都府京都市だが、岩倉木野町という山の中にあるような、まあある意味芸大っぽい立地だ。学長に有名漫画家の竹宮恵子氏が就いたことがあるからわかるように、マンガに特化した大学だ。


詳しい財務比率は同大学HPに載っているため、それを見ていきたい。
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まず、経常収支差額比率は2019年度は若干赤字だったが、それ以前は黒字続きだ(僅かではあるが)。学納金が確保できていない同大学で、どうやって黒字達成しているのか。そうだ、人件費を抑えているからだ!ということで、人件費比率を見る。
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全国平均と変わらず。では、それ以外の教育活動支出を抑えているからか?
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教育研究経費比率は若干平均より下回り、管理経費は平均より高い。
ここで一つの仮説が成り立つ。教育研究費の支出額自体が低いので、管理経費の比率が上がっているのでは?つまり、教育研究経費(人件費は含まれていない)を抑えているから、同大学は支出を抑えられているのだ!ということになる。

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上の表は、京都精華大学と学生数が同規模程度の大学で、教育活動支出を学生数で割り「一人当たり教育活動支出」をはじき出したものだ。
東京工芸大学すげえなという結論になるが、京都精華大学も同規模大学と比べ低く抑えられていることがわかる。

あまりはっきりした要因は見つからなかったが、教育活動支出を抑えているのが一番大きな原因か。
ちなみに、同大学の収容定員は4549人で、およそ1124名も充足できていない。単純計算でこれを学納金に換算すると、約14億円もの毎年得られるはずの収入を逃していることになる。
それほど、学納金収入、ひいては収容定員を充足するというのは大事なことなのだ。
普通、収容定員充足できてなかったら支出だけは収容定員分支出することになるので、赤字になるんだけどね・・・。同大学の節約手法で、なんとか黒字化できているもよう。
また別の視点でみたら違うものが見えるかもですが、今日はここまで。

体育大学は全国でも珍しい。「スポーツ」の名門大学はポツポツと思い浮かべるだろうが、いずれも資金力豊富な総合大学だ(早稲田、青山、日本大学等・・・)。
そんな中でも、体育大学という単科大学で今でも奮闘している私立4大学がある。そう、日本体育大学、大阪体育大学、日本女子体育大学、東京女子体育大学だ。
この4大学、スポーツでの実績はなんとなくわかるが、財務はどうなのだろうか?これからも日本のスポーツ市場の活力となり得るこの4大学がいつまでも財務的に健全であってほしい、そういうった思いから集計を始めた。
今回も見ていく指標は①「運用資産余裕比率」②「経常収支差額比率(3か年)」③「固定負債構成比率」④「学部収容定員充足率(3か年)」の4つだ。
この4指標の点数を集計し、ABCDEでランク付けを行った。
各指標の数値は客観的なものであるが、ランク付けは主観が入っているのはご了承いただきたい。各評価の説明は以下のとおり。

A:極めて良好な状態
B:良好な状態
C:平均並み
D:不良な状態
E:極めて不良な状態

良好や不良といった評価は、芸術系学部という視点から、私学事業団が発行している財務データ「今日の私学財政」の全国平(2019年度決算)を参考につけていった。
それでは各指標のランキング発表といこう。



運用資産余裕比率(全国平均1.4%)

運用資産余裕比率は運用資産(現預金・特定資産等)から外部負債(借入金等)を差し引いた金額が、経常支出の何倍かを示す指標。要するに、経常的な支出(教育活動支出と活動外支出)に見合った貯蓄を行い過度な借金をしていないかを見る指標だ。経常支出に対して「何年分の純運用資産があるのか」といった見方だ。
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1位は東京都国立市にある東京女子体育大学。運用資産は12,026百万円と、日本女子体育の13,307百万円に迫る額だが、経常支出が日本女子体育の半分程度の2,410百万円のため、事業規模が小さい割に貯蓄がしっかりしている構造に。当然無借金。
2位は東京都世田谷区にある日本女子体育大学。運用資産は13,307百万円だが、経常支出も大きいため結果的に2位に。借入金もほとんどなく貯蓄もしっかりしているため、安泰。
3位は東京都世田谷区にある名門・日本体育大学。学生数が一番多く(6,485人)豊富な運用資産(14,850百万円)だが、借入金もがっつりしている(8,142百万円)ため、当比率は低迷。人件費比率は脅威の5割切り、48%と4大学中一番低い(体育学部50.9%)。 最下位は大阪府泉南郡にある大阪体育大学。唯一東京以外の私立体育大学だ。 運用資産は2,297百万円と一番少なく、それを上回る借入金3,674百万円があるため、債務超過に。このような財務状況な割に経常支出は4大学中2番目の6,073百万円と、スリム化できずにいる。人件費比率も4大学中一番高い58%と高止まり。


経常収支差額比率(3か年)

経常収支差額比率は経常的な収支(資産売却など臨時的な要素を除いたもの)に着目した指標だ。プラスが大きいほど収支の安定を示し、マイナスが出ている場合、学校経営の根幹である経常的な収支で資金流出が起きている可能性がある。
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1位はまたもや東京女子体育大学。先ほど見た通り事業規模が小さく、それに見合った支出をしているので毎年5~7%と、安定的な経常収支をみせている。
2位は同じくまたもや日本女子体育大学。東京女子体育大学と同じく収入に見合った支出となっているため、当比率は毎年4~6%と安定している。
3位は日本体育大学。当比率は毎年1~2%となっているが、前述の通り人件費は抑えられているため、人件費ではなく本業の教育活動に投資していると考えれば、理想的な数値か。ただし、安定的な財務のためもう少し経常収支改善を目指したい。
最下位はやっぱり大阪体育大学。人件費比率は年々落としているが、4大学中一番高いうえ、経常支出が高止まりしており当比率は毎年▲4~1%で推移。各種支出を抑えることが先決か。なお、今年度は辛うじて黒字化できたがそれまで4年間ずっと赤字だった。

固定負債構成比率

固定負債構成比率は固定負債の「総負債及び純資産の合計額」に占める構成割合で、主に長期的な債務の状況を評価するものだ。想定される固定負債として長期借入金と退職給与引当金が想定される。ここでは特に長期借入金に着目する。
借入の多さは直ちにネガティブな影響を及ぼさないが、こと体育単価大学に関しては今後の市場・事業規模縮小が予想されるため、過度な設備投資などの借り入れは今やるべきことではないと考えている。
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1位は東京女子体育大学。無借金のため同比率は低く抑えられている。
2位の日本女子体育大学の借入金も微々たるものなので、ほぼ同じポイント。
問題は全国平均を軽く超えてきた大阪体育大学。まず債務超過状態にあるのでいち早く借入金を返済して身軽になる必要がある。借入金利息15百万支払っているが、そんなもの払っている場合ではない。 借入金の中身を見ると青凌高校・中学校校地取得、校舎増築、校舎建設費用など。教育に対する投資は必要だが、実力に見合った額でやるべきだ。 こういった設備投資があるから経常収支差額が赤字なのでは?という問いの答えはノーだ。この大学、設備関係収支を除いた教育活動収支(本業)も本年度のみ辛うじて黒字、それ以前の4年間は赤字だ。

学部収容定員充足率(3か年)

最近どの大学も苦労している学部収容定員充足率。少子化の今、事業規模のレベルは適切にするべきだ。収容定員は事務的な手続きで下げることができても、人件費や施設設備は簡単にカットできない。カットするには大変な労力と時間がかかるのだ。それらを踏まえ、定員充足ができていない場合は、財務が安定している間にゆるやかに適正水準にしておく必要がある。財務がひっ迫している状態で急いで行っても、時すでに遅しなのだ。
同指標では100%以上は全てAとした。
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ようやく順位が入れ替わって1位は大阪体育大学で110.1%。2,917名の学生数で、安定して充足させている。「学生がいっぱいいる」というのが余裕につながり肥大化した支出を止められずにいるのか。
2位は日本女子体育大学で106%。 3位は日本体育大学で105.3%。学生数は6,485名と一番多い。 4位は東京女子体育大学で104.7%。学生数は1,568名と一番少ないが、安定して充足させているため問題なし。

まとめ(総合ランキング)

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1位は全てにおいてA評価の東京女子体育大学。事業規模に比べ豊富な運用資産と安定した経常収支でトップに輝いた。今後は大学の規模拡大か教育内容充実のための投資が望まれるが、毎年入試倍率が1倍程度のため、収容定員増は困難か。体育大学としての格をあげるため、余った運用資産をより優秀なスポーツ選手を集める手立てに使うことが必要だ。
2位は日本女子体育大学。東京女子体育大学と同じく事業規模に比べ豊富な運用資産と安定した経常収支。東京女子体育大学と違い学科によっては倍率が高いところもあるので、さらなる規模拡大が見込めるか。学生数も東京女子体育大学より多いため、潜在能力は高い。
3位は日本体育大学。借入金が多いため①③の指標で低迷し3位に。ただし、豊富な学生数と収入があるため、健全な借金ともいえる。スポーツの実績で言えばここが一番といえるので、財務を無視すれば、この借金や支出は賢明な投資といえるかもしれない(が、ここではあくまで財務ランキングなので低評価)。過度な借入は学校法人には馴染まない。
4位は大阪体育大学。運用資産余裕比率は4大学中唯一のマイナス。経常収支もマイナスで固定負債構成比率も高止まりしており、唯一の救いは豊富な学生数と充足率か。これが原因で赤字続きでも平気なのかもしれないが、そろそろ現実に気づいた方が良い。財務と向き合うべきだ。

まとめてきてわかったが、体育大学は4つしかないからか、収容定員はきちんと充足できている。が、女子体育大学以外の体育大学は財務に無頓着なのか、危なっかしい財務運営となっている。過去のように学生が降ってわいてくるような時代ではないので、きちんと貯蓄し本業以外の収益も見つけるべきだ。

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