カテゴリ: 大学の財務

体育大学は全国でも珍しい。「スポーツ」の名門大学はポツポツと思い浮かべるだろうが、いずれも資金力豊富な総合大学だ(早稲田、青山、日本大学等・・・)。
そんな中でも、体育大学という単科大学で今でも奮闘している私立4大学がある。そう、日本体育大学、大阪体育大学、日本女子体育大学、東京女子体育大学だ。
この4大学、スポーツでの実績はなんとなくわかるが、財務はどうなのだろうか?これからも日本のスポーツ市場の活力となり得るこの4大学がいつまでも財務的に健全であってほしい、そういうった思いから集計を始めた。
今回も見ていく指標は①「運用資産余裕比率」②「経常収支差額比率(3か年)」③「固定負債構成比率」④「学部収容定員充足率(3か年)」の4つだ。
この4指標の点数を集計し、ABCDEでランク付けを行った。
各指標の数値は客観的なものであるが、ランク付けは主観が入っているのはご了承いただきたい。各評価の説明は以下のとおり。

A:極めて良好な状態
B:良好な状態
C:平均並み
D:不良な状態
E:極めて不良な状態

良好や不良といった評価は、芸術系学部という視点から、私学事業団が発行している財務データ「今日の私学財政」の全国平(2019年度決算)を参考につけていった。
それでは各指標のランキング発表といこう。



運用資産余裕比率(全国平均1.4%)

運用資産余裕比率は運用資産(現預金・特定資産等)から外部負債(借入金等)を差し引いた金額が、経常支出の何倍かを示す指標。要するに、経常的な支出(教育活動支出と活動外支出)に見合った貯蓄を行い過度な借金をしていないかを見る指標だ。経常支出に対して「何年分の純運用資産があるのか」といった見方だ。
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1位は東京都国立市にある東京女子体育大学。運用資産は12,026百万円と、日本女子体育の13,307百万円に迫る額だが、経常支出が日本女子体育の半分程度の2,410百万円のため、事業規模が小さい割に貯蓄がしっかりしている構造に。当然無借金。
2位は東京都世田谷区にある日本女子体育大学。運用資産は13,307百万円だが、経常支出も大きいため結果的に2位に。借入金もほとんどなく貯蓄もしっかりしているため、安泰。
3位は東京都世田谷区にある名門・日本体育大学。学生数が一番多く(6,485人)豊富な運用資産(14,850百万円)だが、借入金もがっつりしている(8,142百万円)ため、当比率は低迷。人件費比率は脅威の5割切り、48%と4大学中一番低い(体育学部50.9%)。 最下位は大阪府泉南郡にある大阪体育大学。唯一東京以外の私立体育大学だ。 運用資産は2,297百万円と一番少なく、それを上回る借入金3,674百万円があるため、債務超過に。このような財務状況な割に経常支出は4大学中2番目の6,073百万円と、スリム化できずにいる。人件費比率も4大学中一番高い58%と高止まり。


経常収支差額比率(3か年)

経常収支差額比率は経常的な収支(資産売却など臨時的な要素を除いたもの)に着目した指標だ。プラスが大きいほど収支の安定を示し、マイナスが出ている場合、学校経営の根幹である経常的な収支で資金流出が起きている可能性がある。
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1位はまたもや東京女子体育大学。先ほど見た通り事業規模が小さく、それに見合った支出をしているので毎年5~7%と、安定的な経常収支をみせている。
2位は同じくまたもや日本女子体育大学。東京女子体育大学と同じく収入に見合った支出となっているため、当比率は毎年4~6%と安定している。
3位は日本体育大学。当比率は毎年1~2%となっているが、前述の通り人件費は抑えられているため、人件費ではなく本業の教育活動に投資していると考えれば、理想的な数値か。ただし、安定的な財務のためもう少し経常収支改善を目指したい。
最下位はやっぱり大阪体育大学。人件費比率は年々落としているが、4大学中一番高いうえ、経常支出が高止まりしており当比率は毎年▲4~1%で推移。各種支出を抑えることが先決か。なお、今年度は辛うじて黒字化できたがそれまで4年間ずっと赤字だった。

固定負債構成比率

固定負債構成比率は固定負債の「総負債及び純資産の合計額」に占める構成割合で、主に長期的な債務の状況を評価するものだ。想定される固定負債として長期借入金と退職給与引当金が想定される。ここでは特に長期借入金に着目する。
借入の多さは直ちにネガティブな影響を及ぼさないが、こと体育単価大学に関しては今後の市場・事業規模縮小が予想されるため、過度な設備投資などの借り入れは今やるべきことではないと考えている。
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1位は東京女子体育大学。無借金のため同比率は低く抑えられている。
2位の日本女子体育大学の借入金も微々たるものなので、ほぼ同じポイント。
問題は全国平均を軽く超えてきた大阪体育大学。まず債務超過状態にあるのでいち早く借入金を返済して身軽になる必要がある。借入金利息15百万支払っているが、そんなもの払っている場合ではない。 借入金の中身を見ると青凌高校・中学校校地取得、校舎増築、校舎建設費用など。教育に対する投資は必要だが、実力に見合った額でやるべきだ。 こういった設備投資があるから経常収支差額が赤字なのでは?という問いの答えはノーだ。この大学、設備関係収支を除いた教育活動収支(本業)も本年度のみ辛うじて黒字、それ以前の4年間は赤字だ。

学部収容定員充足率(3か年)

最近どの大学も苦労している学部収容定員充足率。少子化の今、事業規模のレベルは適切にするべきだ。収容定員は事務的な手続きで下げることができても、人件費や施設設備は簡単にカットできない。カットするには大変な労力と時間がかかるのだ。それらを踏まえ、定員充足ができていない場合は、財務が安定している間にゆるやかに適正水準にしておく必要がある。財務がひっ迫している状態で急いで行っても、時すでに遅しなのだ。
同指標では100%以上は全てAとした。
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ようやく順位が入れ替わって1位は大阪体育大学で110.1%。2,917名の学生数で、安定して充足させている。「学生がいっぱいいる」というのが余裕につながり肥大化した支出を止められずにいるのか。
2位は日本女子体育大学で106%。 3位は日本体育大学で105.3%。学生数は6,485名と一番多い。 4位は東京女子体育大学で104.7%。学生数は1,568名と一番少ないが、安定して充足させているため問題なし。

まとめ(総合ランキング)

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1位は全てにおいてA評価の東京女子体育大学。事業規模に比べ豊富な運用資産と安定した経常収支でトップに輝いた。今後は大学の規模拡大か教育内容充実のための投資が望まれるが、毎年入試倍率が1倍程度のため、収容定員増は困難か。体育大学としての格をあげるため、余った運用資産をより優秀なスポーツ選手を集める手立てに使うことが必要だ。
2位は日本女子体育大学。東京女子体育大学と同じく事業規模に比べ豊富な運用資産と安定した経常収支。東京女子体育大学と違い学科によっては倍率が高いところもあるので、さらなる規模拡大が見込めるか。学生数も東京女子体育大学より多いため、潜在能力は高い。
3位は日本体育大学。借入金が多いため①③の指標で低迷し3位に。ただし、豊富な学生数と収入があるため、健全な借金ともいえる。スポーツの実績で言えばここが一番といえるので、財務を無視すれば、この借金や支出は賢明な投資といえるかもしれない(が、ここではあくまで財務ランキングなので低評価)。過度な借入は学校法人には馴染まない。
4位は大阪体育大学。運用資産余裕比率は4大学中唯一のマイナス。経常収支もマイナスで固定負債構成比率も高止まりしており、唯一の救いは豊富な学生数と充足率か。これが原因で赤字続きでも平気なのかもしれないが、そろそろ現実に気づいた方が良い。財務と向き合うべきだ。

まとめてきてわかったが、体育大学は4つしかないからか、収容定員はきちんと充足できている。が、女子体育大学以外の体育大学は財務に無頓着なのか、危なっかしい財務運営となっている。過去のように学生が降ってわいてくるような時代ではないので、きちんと貯蓄し本業以外の収益も見つけるべきだ。

あります。

〇〇比率とか言われてもピンときませんよ、という人いるでしょう。比率でみるのはその大学の規模にあったものかどうかで見るためなので、絶対値で見ると全体像がボヤけてしまうのですが。でも、もっと手っ取り早く見る方法、あります。
最初に断っておきますが、財務は総合的な視点で見ていかないとわからない部分もあり、これをもって必ずしもヤバイというわけではありませんが、まあほぼイコールと思ってもらっても大丈夫です。

1.将来的にヤバイ大学かどうか見たい。
→「貸借対照表」における「特定資産」が
極端に低いまたは0、「現金預金」が極端に低い。
これは、実際に財務書類を見るのが良いだろう。大学部門の募集停止を発表した上野学園大学の財務書類を見てみよう。財務書類は大抵「大学紹介」の「情報公開」に掲載されている。

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特定資産1億2000万円、現金預金2億2000万円となっている(「その他固定資産」に有価証券があるかもしれないが、微々たるものだろう)。これがこの学園の運用できる、流動的な資金だ。ここでヤバイセンサー機能してほしい。
「この金額が大きいのか小さいのかピンとこない」という人もいるだろう。もしかしたら事業規模が極端に小さくて、支出も少ないのかもしれない。この運用資産(貯蓄)であと何年もつのか。
「毎年どのくらい資金が増加・流出しているか」を見る「活動区分資金収支計算書」がある。

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この計算書の一番下から3番目に「支払資金の増減額」とあるが、これが実際のその年度における資金の増減額だ。
「お、上野学園4800万円もプラスでスゴイやん!」と思うでしょう。違うんです。上の方を見てください。
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「教育活動による資金収支」は本業と思ってください。本業は1億8000万円の赤字。
「施設設備等活動による資金収支」はその名のとおり施設設備維持にかかる資金収支で3100万円の赤字。
「あれ、赤字続きなのになんで最終的に黒字なの?」と思ったら、下の方を見ましょう。
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「その他の活動による資金収支」は、その他投資等活動による資金収支だが、上野学園は4億3000万円もの借入をを行っており、結果的にその他活動資金収支差額が2億6000万円のプラスになったので、最終的には4800万円のプラスになったというわけだ。
つまり、本業だけだと2億円近くの赤字で、現在の運用資産(貯蓄)約3億400万円が2年ともたない状況である。
こんな状態だからこそ、借入を行ってなんとかやっていけているのだ。

ヤバイ大学かどうか見るには、まず「特定資産」をきちんと積立てているか見るべきだ。その次に現預金を見て、有価証券もあるか見る。「現預金が豊富にあるな」と思っても、実際は借入によるものだったりする。

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ちなみに刑事事件とか民事再生法適用とか色々あった明浄学院(大阪観光大学)は特定資産0、現金預金6000万円の状態で、長期借入金が2億2000万円という絶望的な状態だ。

今日はここまで。反応あったら、続編やります。

・まとめ
①まず特定資産を見て極端に少ないかどうかみる
②活動区分資金収支計算書を見て資金の流出がないか確認する、それをもって何年分もつか確認する。
③極端に借入金がないか確認する。

人気Youtuber・加藤純一氏は、自身の病院での勤務体験により「ブラック企業は小さな北朝鮮」と表現した。トップの一存ですべてが決まり、一般社員は重い労働を課せられるからだ。大学も、ある意味それに近いところが散見される。

12月22日、とんでもないニュースが流れた。

東京福祉大、創設者が復帰 わいせつ実刑、文科省の指導にもかかわらず…



記事によると、教職員への強制わいせつ罪で実刑判決を受けたことがある創設者が、その後学園の総長に返り咲いたそうだ。にわかには信じがたい話であるが、こんなことも大学ならあり得るのだ。その辺の非上場の中小・零細企業の話ではない。経常費補助金、つまり税金が投入されている高等教育での話だ。

この学園、不祥事のオンパレードだ。
平成24年度に経営学部を新設しようとしたが、「不可」の判定をくらう。不可の理由として、数々の管理運営面での問題が指摘されているからだ。

文科省の指摘はリンク先のとおり、多岐にわたる。
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2011/12/16/1314013_3_1.pdf

以下、それらの抜粋だ。
平成20年1月に当時の理事長が複数の刑事事件を引き起こした後…(中略)…元理事長について「理事長・理事及び学長・教授等として復帰することを認めない」と報告。しかしながら、平成 22 年 7 月から、本法人は元理事長を事務総長として雇用し、法人運営に関与させていた。
本法人は、平成 22 年 9 月末で元理事長の雇用を解消した後の同年 10 月に は、改めて、理事長名で文部科学大臣に対し、元理事長について「現在、経営や 教育に関与しておらず、今後も一切関与させない」と報告。
しかしながら、本法人は、同年 10 月から、…(中略)…元理事長が社員として在籍する会社(社員数 3 人)にコンサルタント業務を委託し、社員である元理事長から、学生募集等に関するコンサルティングを受けていた。
平成 22 年 10 月から、本法人は、学生募集等に関する業務をコンサルタント会社に委託したが、委託後、約半年間、コンサルタント会社と契約書を締結しておらず、平成 23 年 3 月に平成 22 年 10 月に遡って作成していた。平成 23 年 3 月に契約書を締結するまでの間、コンサルタント会社名義の口座 があるにも関わらず、本法人は、コンサルタント会社からの請求通りに、元理事長の個人口座に総額約 1,941 万円を支払っていた。

メチャクチャじゃねーか!!

その他クレカの不正利用(その後指摘により返還)など、おおよそ教育人がやることではないことをやってのけた。このようなフザけた運営を、許して良いのだろうか?

また、東京福祉大学といえば留学生約1600人所在不明事件が有名であろう。
逆によく、1600人も所在不明であることを突き止めたな。



平成30年度の時点で、5,133人もの留学生が在籍していたようだ。



収容定員を充足できない大学は、東京にサテライトを置いて留学生をめちゃくちゃ呼び込んで充足させる、という手を使うが、これはいかがなものか・・・。

さて、一応財務系ブログなので、同学園の財務状況を見てみよう。
同大学の設置者は茶屋四朗次郎記念学園。大学転職を考えた方は、何度も見た名称であろう。
運用資産と外部負債の経年変化は以下のとおり。

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ご覧のとおり、運用資産は右肩下がりの一方、外部負債は増加。事業報告書を見ると平成30年度に池袋キャンパス 10 号館開設、王子キャンパス 6 号館開設と立て続けにキャンパスを開設している。留学性の受け皿をさらに増やすための施策か。また、名古屋キャンパス 10 号館も開設しており、「東京」福祉大学「名古屋」キャンパスといういびつな構造に。
また、2018年→2019年にかけて現預金が1,700百万円ほど減っているが、シンプルに教育活動「資金」収支で1,000百万円ほどのキャッシュ減となっている。

では、教育活動収支(本業)と経常収支(本業外含む)を見てみよう。
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安定した収支をみせていたが、2019年は赤字に転落。理由は色々あるが、各種支出の増加と学納金の減少、問題を起こしたことにより補助金が減額されたことが大きい。コロナの関係で今後も留学生確保は困難なため、2020年度決算も悪化が懸念される。

概していうと、預貯金の二倍の債務があり、経常収支も悪化している状態。
今後も安定して借入ができれば良いのだが、やはり留学生に頼り切りの構造は良くない。また、手広くキャンパスを広げており、これらが重荷になる可能性は高い。

この大学に限らず、ワンマンで無茶をしている大学は多い。文科省さん、一回精査しませんか・・・?




2012年11月、大学業界に激震が走った。日本学術会議の人選問題よりも、もっと根本的な問題だ。
秋田公立美術大学、札幌保健医療大学、岡崎女子大学の3つの大学新設について、大学設置・学校法人審議会の認可を覆すことを田中氏(当時文科大臣)が示唆し大騒ぎになった。




3大学でも大きいが、そのほかに同時期に既設大学の16学部、13の大学院を認可していたので、こりゃヤバイことになるぞと騒然となった。
大学を設置する際、よほど事務が無能でなければ、潤沢な資金と計画でヘマしない限り認可される。もちろん学生確保の見通しや書類上の高度なハードル、教員確保やキャンパス確保は大変なものだが、金にモノ言わせて紀伊国屋やら業者に委託すりゃある程度形になるのだ(担当者は大変な目にあうが)。
それなりの準備をし、あとは審査がザルの学校法人審議会の了承をもらえれば認可、あとは文科大臣の認可ももらって学生募集スタート!となる。
ザルの審議会といったが、これは審議会の構成員個人に対する批判ではなくその組織そのものだ(その一個人・担当者が不可をしたくとも、前例の基準を踏襲しないといけないのだ)。

田中氏は不認可の理由として「大学が多すぎ、質が低下している」と話したが、これは全国民がなんとなく感じていることだろう。なぜ少子化なのに、大学が増えるのだろうか。

不認可になりかけた上記3大学、その後どうなったかを財務面等で追ってみた。
秋田公立美術大学は公立で会計基準も違い、最終的には県が助けてくれるため財務面はカット。

それではまず、札幌保健医療大学からだ。
7つの専門学校と3つの福祉会をもつ、吉田学園が母体だ。よって、財務書類も学園全体の者となってしまうため純粋な大学の財務は見られないがそこは仕方ない。
まず、当然のように定員未充足だ。学部収容定員充足率は78.8%。偏差値はBF~40。入試倍率は1.5倍だ。
教育活動収支(本業の収支)と経常収支(教育外も含めたもの)の経年変化は下記のとおり。
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2017年に赤字転落したが、その後は持ち直している。大学の学納金はそれほど増えていないため、これはおそらくその他専門学校での収支改善があったと予想。まあ、全体としてそれほど悪くない。
では特定資産(貯蓄)や借入金等はどうか。
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事業規模にしてはそこそこの貯蓄、といったところか。それほど多くもないという感じ。
大学はずっと未充足なので、他の設置校の収支で助けられていると予想。2015年はデータがなかったので不明。


次に岡崎女子大学。愛知県岡崎市に本部を置く、短期大学も持つ学校法人だ。「短期大学のノウハウもあるなら4年制も大丈夫だ!」と思ったがそこは違った。
充足率は当然のごとく未充足で89.5%。偏差値はBFで入試倍率は1.2倍。
教育活動収支(本業の収支)と経常収支(教育外も含めたもの)の経年変化は下記のとおり。
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はい捕まえたあああああああああ!

いや、収支は改善してますよ?でもこれ、あまりにも赤字続き過ぎて・・・。中身を見ると学納金の額が増えているので、充足率を改善してきたのであろう。
これだけ赤字を出して特定資産(貯蓄)や借入金は大丈夫なのか、見ていく。
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借入金は一貫して0.特定資産も微減といったところだろうか。赤字続きの割には貯蓄の取り崩しもなく、それほど悪くはない。

この2校ともいえることは、財務はそれほどひっ迫しておらず悪い状態ではないことだ。だが偏差値や充足率を見る限り、この先はかなりの困難が予想される。

ちなみに秋田公立美術大学は充足率102.1%、偏差値52、入試倍率も2.1倍と良好な状態だ。さすが公立大、強いな。

恐ろしいことに、大学は今現在もドンドン誕生している。
2020年には湘南鎌倉医療大学、名古屋柳城女子大学、高知学園大学、静岡県立農林環境専門職大学、東京国際工科専門職大学、びわこリハビリテーション専門職大学、東京保健医療専門職大学、情報経営イノベーション専門職大学、開志専門職大学、岡山医療専門職大学、静岡県立農林環境専門職大学短期大学部が新設された。ウソみたいな話だが本当なのだ。 
2021年も多くの新設大学が誕生する。そう、少子化なのに、だ。

皆さんはこれをみて、改めて大学不認可問題についてどう思いますか?
コメントでご意見いただければ、と思います。

加計学園といえば獣医学部問題で有名であるが、この学園、3大学3専門学校、中学高校と幼稚園を持つどデカイ組織なのだ。設置大学は岡山理科大学(岡山)、倉敷芸術科学大学(同)、千葉科学大学(千葉)と、かなり多様性がある。
積極経営でも有名であり、改組・学部新設を頻繁に行っている。一つ一つあげていったらキリがないが、岡山理科大学においては2016年に教育学部、2017年に経営学部、2018年にはあの獣医学部設置とかなりの教育投資を行っている。
それに伴い収支も悪化してしまっているから笑えない。2015年から2019年の教育活動収支と経常収支(教育収支+教育外収支)を見ていこう。

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※加計学園「財務情報等」より作成
 https://www.kake.ac.jp/information/finance.html


2016年までは辛うじて黒字をキープしていたが、2017年以降は赤字が大幅拡大。中身を見ると学納金等の収入は増えていない(むしろ減っている)のにもかかわらず、人件費や各種支出が増えてしまっている。学部新設等を行っているため一時的なものは仕方ないが、これは極端である。また、充足率を見てみると、岡山理科大学が93.9%、倉敷芸術科学大学が74.3%、千葉科学大学が70%とすべての大学において定員未充足状態が続いている。これでは経常収支は安定しない。
経常収支が安定しないとキャッシュも減り、貯蓄の取り崩しも借金もする。同学園の運用資産(貯蓄)と借入金残高を見ていく。
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運用資産は現預金・特定資産の他に有価証券を持っている可能性があるが、内訳がわからないためこの2つのみで集計。大勢に影響はないと思う。
これを見ると運用資産がどんどん減っている一方で、借入金は増えていっている。
運用資産余裕比率は2015年の53%から2019年に3%と激減。
経常収支が安定しない限り、この負のスパイラルからは抜け出せずより悪化していく。
この学園の良いところは、各種財務比率を惜しみなく公開し、私学事業団の指標でイエローゾーンであることを事業報告書きちんと書いていることだ。
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※加計学園「事業計画・事業報告」より抜粋
 「https://www.kake.ac.jp/information/project.html」

Wikipediaによると2020年には岡山理科大学で情報理工学部と生命科学部を新設予定らしい。本当に大丈夫か・・・?

そんな学園だが、近々公開予定の「日本の芸術大学 財務健全性ランキング」に、設置大学である倉敷芸術科学大学も登場する。果たして何位なのか?!ブログ公開をお楽しみに!



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